1.投影の大分類

投影(projection)

3次元空間上の物体を2次元の平面に映し出すことを指します。 投影にはいくつかの方式があり、大別すると中心投影と平行投影に分けられます。 本サイトで主に扱う透視投影は中心投影に分類されます。

透視投影(perspective projection)

3次元空間上の各点と視点を結び、投影面との交点を投影点とする投影方式です。 この方式で投影を行うと、遠くにある物体ほど相対的に小さく映し出されるという特徴があるため、遠近感を表す際に利用されます。 また一般的なカメラは透視投影を基本原理としているため、写真やテレビの実写映像は基本的に透視図です。

カメラと被写体の距離を十分に離せば、平行投影とほぼ同じ投影結果を得ることができます。

平行投影(parallel projection)

3次元空間上の各点と投影面を平行線で結び、その交点を投影点とする投影方式です。 この方式で投影を行うと、いわゆる遠近感が付きません。 つまり実空間上で同じ大きさのものは投影面上でも同じ大きさで描画されます。 機械図面や部屋の間取り図など、大きさを正確に把握したい場合には、この投影方法が適しています。

平行投影はカメラを無限遠に置いた透視投影に相当するため、平行投影図は透視図の定義に沿って描くことができます。


投影の分類

2.平行投影の分類

垂直投影(orthographic projection)

平行投影の一種であり、3次元空間上の各点から投影面に対して下した垂線の足を投影点とする投影方法です。 超望遠レンズで撮影した写真は、垂直投影とほぼ同じものになります。

正投影(multiview orthographic projection)

垂直投影の一種であり、投影面を座標軸と平行な向きに配置する投影方法です。 視点を無限遠に置いた一点透視に相当します。 1枚だけでは立方体の1面しか表現できないため、通常は複数枚(2~6枚)を組み合わせたものを1組の投影図として扱います。

軸測投影(axonometric projection)

垂直投影の一種であり、投影面を座標軸と平行でない向きに配置する投影方法です。 視点を無限遠に置いた三点透視に相当します。略称はアクソメです。 正投影と異なり、1枚の図で立方体の3面を表現することができます。 (基本は垂直投影ですが、斜投影のものも存在します。単にアクソメ図と言った場合は、斜投影のものを指すことが多いです)

等角投影(isometric projection)

軸測投影の一種です。 消失点が正三角形を描く三点透視において視点を無限遠に置いたものに相当します。 略称はアイソメです。 作図のしやすさと見栄えの良さから、軸測投影の中でも最も人気の高い投影法と言えます。

二等角投影(dimetric projection)

軸測投影の一種です。 消失点が(正三角形以外の)二等辺三角形を描く三点透視において視点を無限遠に置いたものに相当します。

不等角投影(trimetric projection)

軸測投影の一種です。 消失点が(正三角形を含む)二等辺三角形でない三点透視において視点を無限遠に置いたものに相当します。

斜投影(oblique projection)

平行投影の一種であり、投影面に対して垂直でない直線を引いたときの交点を投影点とする投影方法です。 標準~広角レンズで撮影した写真の外周部をわずかだけトリミングすれば、斜投影とほぼ同じものになります。 (垂直投影は視心付近をトリミングしたものであるのに対し、斜投影は視心以外のどこかを一部だけトリミングしたものに相当します)

カバリエ投影(cavalier projection)

斜投影の一種です。 投影面を座標軸と平行に配置した上で、視線のみを斜め方向にする投影法です。 結果として物体の正面は正投影と同じ見た目になります。 つまり物体の正面は正投影と同じように描き、奥行のみ斜め方向(45°や30°など)に描きます。 カバリエ投影では正面と奥行の長さを同じ比率とします。視点を斜め方向の無限遠に置いた一点透視に相当します。

キャビネット投影(cabinet projection)

斜投影の一種です。 基本的にカバリエと同じですが、正面に対して奥行は半分の長さで描きます。


平行投影における垂直投影と斜投影の違い

[Click] 平行投影図の作図法

アクソメ図の作図法 詳しくは応用の章で解説する予定でいますが、アクソメ図を含むすべての平行投影図は普通の透視図法で描くことができます。 唯一の違いは、消失点が非常に遠いというだけであり、仮に3つの消失点が100キロ先にあったとすれば、どのような図になるかということを想像しながら描けば、おのずと答えが出ます。

見方を変えれば、消失点を結んでできる三角形に対して極めて小さいPPを取るイメージです。 VCの位置にPPを取れば垂直投影になり、VC以外の位置に取れば斜投影になります。

平面図SPの位置に極小のPPを取れば、下記コラムに示す斜投影の軸測投影図を描くことができます。(作図ルールのVCの部分はSPに置き換えて下さい)

透視図ベースで作図するメリットとして、グリッドの単位長を正確に決定できる点が挙げられます。 左図の立方体は対角消失点法によって描かれた正確な立方体であり、分割法を使えば正確な単位長を持ったグリッドを作図できます。


[Click] 斜投影のアクソメ図

平面斜投影図 建築やデザイン業界で使われる「アクソメ図」は垂直投影ではなく斜投影の軸測投影図を指すことが多いようです。 これは左図のような平面部が90°をなすものを指し、「斜軸測投影(oblique axonometric projection)」と呼ばれる他、 「平面斜投影(planometric projection)」や「ミリタリ投影(military projection)」という名称が使われることもあります。

この図の特徴は平面図をそのまま当てはめることができる点に集約されます。 つまり非常に描き易い図であり、一定の普及を見せている理由でもあります。

左図が斜投影になる理由について説明しておきます。 正投影であれば、垂直投影であっても2軸のなす角を90°にできますが、面が1つしか見えないという欠点があります。 面が3つ見えるアクソメ図の場合、ベースが3点透視であるため、2軸のなす角(∠VP1-VC-VP2)はどうやっても90°を超えてしまいます。 よって面を3つ見せた上で90°の面を作るには、斜投影にするしかありません。

大半の3Dソフトは平行投影と透視投影の切り替えができるため、アクソメ図は3Dソフトで表示できます。 3Dオブジェクトを斜めから見た状態にして、平行投影を選べばアクソメ図になります。 ただし多くのソフトが採用しているのは垂直投影(orthographic)なため、左図のような斜投影は表示できないかもしれません。


3.三面図

三面図

平面図、側面図、正面図を総称して三面図と呼称します。いずれも平行投影であり、分類は正投影になります。 (的確な訳語はなく、多面の垂直投影図という意味であればmultiview orthographic projection。三面図を強調したい場合は、説明調で3-sidedなどの形容をするか、単にfront, top and side viewと表現するしかない)

平面図(top view または plan view)

平面図とは、空間を真上から見た図のことを指します。

側面図(side view)

側面図とは、空間を真横から見た図のことを指します。

正面図(front view)

正面図とは、空間を真正面から見た図のことを指します。


前のページ 次のページ