はじめに

この節では消失線の分類および、各消失線に対応するSPの取り方について説明します。 透視図法における平面は、大別すると下表の3種類に分類されます。このうち消失線を持つ平面は、下2つのいずれかとなります。

平面の分類消失線解説
PPと平行 持たない PPと平行な平面とは、カメラと正対している平面、すなわちカメラから同一距離(*)にある点の集合が作る平面のことです。 この平面は消失線を持たず、平面上のあらゆる直線も消失点を持ちません。1点透視図の1つの面がこれに該当します。
PPと垂直 持つ
(視心を通る)
PPと垂直な平面は、消失線が視心を通るという特徴を持ちます。対応するSPは90°視円錐の縁に現れます。図法的には扱いやすいと言えます。1点透視図の2つの面、および2点透視図の1つの面がこれに該当します。
PPと斜め交差
(平行でも垂直でもない)
持つ
(視心を通らない)
PPと平行でも垂直でもない平面は、消失線が視心を通りません。対応するSPは90°視円錐の内側に現れます。図法的な難度は高めです。2点透視図の2つの面、および3点透視図のすべての面がこれに該当します。
※透視図法における距離の考え方については、概要の章を参照してください。

1~3点透視図における消失線

1点、2点および3点透視図における消失線とそれに対応するSPを下表に示します。

平面の分類 透視図 解説
白:PPと平行
青:PPと垂直
赤:PPと垂直
1点透視図の消失線とSP 1点透視図は正対面を除く2つの平面が消失線を持ちます。2つの平面はPPと直交しているため、2本の消失線は視心を通ります。また2本の消失線は直交します。
青:PPと垂直
赤:PPと斜め
緑:PPと斜め
2点透視図の消失線とSP 2点透視図は1つの面(青い面)がPPと直交しているため、消失線が視心を通ります。残り2つの面はPPと斜めで交差するため、消失線が視心を通りません。この2面に対応するSPは測点と同じ位置に発生します。3本の消失線は互いに平行または直交します。
青:PPと垂直
赤:PPと斜め
緑:PPと斜め
垂直2点透視図の消失線とSP 垂直2点透視図は、図の構造的には水平2点透視図とまったく同じです。ただし空間的な意味を考えると、赤線が水平線であるのに対し、緑線の意味合いを掴みづらいかもしれません。 赤は地面と平行な平面であり、青と緑は共に地面と垂直な平面です。青はPPとも直交していますが、緑は直交していません。
垂直二点透視の側面図
青:PPと斜め
赤:PPと斜め
緑:PPと斜め
3点透視図の消失線とSP 3点透視図は3つの面すべてがPPと斜め交差します。よって3本の消失線はいずれもが視心を通りません。また3本の消失線は互いに平行にも垂直にもならず、三角形を描きます。

消失線の分類とSPの取り方

消失線は図法的に分類すると、視心を通るか否かの2種類しかありません。つまり覚えるべき作図法は2パターンに限定されます。 特に平面図形(円など)に関しては、平面間に相似性があるため、同一の作図法をあらゆる平面に適用できます。

次のスライドでは消失線の図法的分類の解説を交えながら、消失線に対するSPの取り方について説明します。SPを取る理由は主に3つぐらいあります。

  1. 消失線上の任意の角度の消失点を取るため
  2. SP自体が距離点や測点としての働きを持つため
  3. 足線法を使う場合、SPが必要。(平面図形であればPPと斜め交差する平面でも使えます)

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消失線の分類とSPの取り方

[Click] 視心を通らない消失線に対するSPの作図手順

以下の手順はスライドP12を参照してください。

  1. 視心から消失線に向かって下した垂線の足が0°消失点になります。
  2. 視心から消失線と平行な直線を引き、90°視円錐との交点を求めます。
  3. 0°消失点と手順2で求めた点を直線で結びます。
  4. 0°消失点を中心とし、3を半径とする円を描き、直線1の延長上で交点を求めると、そこがSPになります。(平面図SPと区別するため、SPsと表記することにします。sはslopeのsですが本サイトでしか通用しない表記です)
※作図原理は画角の立体的解釈のスライド後半を参照してください。


[Click] 90°視円錐が必要?

SPを作図するには90°視円錐が必要です。正確には90°視円錐の半径が必要です。 実際に円を作図していなくても、半径の値さえ把握できていれば、物差し1本でも作図できます。

制約のない画面であれば半径を自由に決めることができます。また制約がある場合でも1、2点透視図であれば半径を求めるのは簡単です。 1点透視図は視心から距離点までの長さが90°視円錐の半径になります。 2点透視図の場合は、視心から2つの消失点までの長さa,bを測れば、90°視円錐の半径は√abで求めることができます。



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