視心と視円錐

視円錐の説明図

ここで目に映る範囲について、より深く考察したいと思います。 人の視界は目の位置を頂点とする円錐状に広がっており、これを図形的に表現したものが上図です。 この視野を表す円錐には名前が付いており、「視円錐(しえんすい)」と呼ばれます。 また、円錐の中心軸は「視心(ししん)」と呼ばれ、視線の向きと一致します。 まとめると、視円錐とは「視心を中心とした一定範囲の視野を図形的に表現したもの」と言えます。

実際の人間の視野は水平方向に比べて垂直方向が狭いため、厳密にいえば円錐ではなく楕円錐のような形になるはずですが、 視円錐とは現実の視野そのものを表しているわけではなく、どちらかと言えば数学的思考をするための論理的な視野であるため、円錐で表現するのは一種の便法であると解釈してください。

もちろん実際の視野を扱う場合は、視野の形に合わせて図形を用意する必要があります。 例えばカメラは円形のレンズを付けていますので、完全な円錐の視野を持ちます。ところが写真は一般的に長方形です。これは元々円形であった視野を四角く切り取っているからです。 もしカメラの存在を無視し、写真単体で考えるのであれば、「写真の視野は長方形であり、その立体形状は四角錐である」と考えることもできます。

視円錐の形状について、もう少し考えてみましょう。 まず円錐の底面についてですが、一般に視界というのは非常に広く、星空を眺めれば何億光年の彼方でさえ見渡すことができます。 従って、現実には底面が無限遠にある円錐を考えるのが妥当と言えそうです。 次に円錐の頂角(先のとがった部分の角度)ですが、これが画角になります。 上図の視円錐の場合、画角は45度です。 画角が広いほど広範囲を見渡すことができますが、透視図法ではいたずらに画角を広げると弊害が発生します。 広角による弊害については、後節で解説します。

透視図における画角とは

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透視図における画角

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