画角の解説用、旅行者、標準レンズ

画角とは

画角とは、写真や絵画で画として収まる範囲を角度で表現したものです。 すなわち、カメラの場合は写真フレームに収まる範囲のことであり、絵画の場合はキャンバスに収まる範囲を指します。 類似の概念として視野角というものがありますが、これは人などの視界に入る範囲を角度で表現したものです。 人間は両目を駆使すると、水平方向200°、垂直方向125°程度の視野角を持っています。

人間の視野角

数字だけを取り出せば、かなり広範囲を見渡せることになりますが、残念ながら視界の端の方ははっきりと物が見えません。 実際に試してみるとわかりますが、視界の端ギリギリに手を持っていき、ジャンケンのポーズを作ってください。 かろうじてグーチョキパーのいずれかが判別できる程度だと思います。 比較的はっきりと物が見える範囲は45°~60°程度でしょう。 さらに文字が読めるほどクリアに見える範囲となると、わずか2°程度しかありません。 その2°の範囲に入った場合でさえ、焦点が合わなければはっきりとは見えません。 試しに、目の前に指を立ててみてください。 指を凝視した状態で、その向こうにあるモニタの文字は見えないことが確認できると思います。 人間は同時に1つの奥行に対してしか焦点を合わせられないのです。この同時にはっきり見える奥行の範囲を被写界深度と言います。

視野そのものは広くても、人間が一度に認識できる範囲は相当に狭いです。 しかし、これを補うために人間は視線移動を行います。人は無意識のうちに眼球を小刻みに動かし、総合的に広い視野を得ています。

絵画で表現される絵というものは、総合的に得られた情報をベースとすることが一般的です。 なぜなら瞬間的に見える範囲はわずか2°しかなく、これを絵にしてもまともな表現にならないからです。

[Click] 画角と視野角の定義

「画角」と「視野角」は同じ意味で使われることがあり、厳密な言葉の定義がないようです。本サイトでも、以降の章では同じ意味として使用します。


[Click] 同時に見える範囲

文庫本程度の大きさであれば、同時に全体がくっきり見えると思うかも知れませんが、残念ながら見えません。 全体を同時に見ているように感じても、それは無意識の視線移動によってそう感じているだけであって実際には見えていません。 人物の全身が写った写真を用意してください。 まず人の顔がくっきり見えるよう凝視してください。 その状態で体のそれ以外の部位(胴体や足)はボケることが確認できると思います。 しかし、そのボケた部分をはっきり見ようとすると、今度は顔がボケてしまいます。 仮に一部を凝視しないとしても、頭のてっぺんからつま先までを同時にくっきり見ることはできないでしょう。


[Click] 視覚と絵画表現の違い

人間は視線移動を駆使して広範囲の視野を得ています。極端な話、首を回せば360度全方位の視覚を得ることもできます。 しかし、それを平面のキャンバスに描けと言われれば、普通の方法では描けません。

人間の視覚に近い表現が何を指すかは度々議論の的となります。 カメラで言えば、標準レンズが人間の視野に近いといわれていますが、人によっては望遠レンズの方が近いと主張する人もいます。 なぜ、統一した意見が出ないのかというと、そもそも人間が感じている視覚は、 瞬時的な視野を多数集めた総合的感覚であって、それは平面的に表現できうるものではないからだと考えられます。

結局のところ、平面絵画は表現上なんらかの妥協が必要であるということです。



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