画角の測り方

地面に描かれた2点透視図の正方形を元に、視心とSPを逆算する方法と画角を測る方法を説明します。また併せて、長方形を正方形に拡張する方法と正方形を立方体に拡張する方法も示します。

PAGE 1/x
2点透視における画角の測り方

[Click] 視心やSPを特定できないとはどういうことか?

スライドのPAGE3で長方形の辺の比が不明なとき、視心とSPが特定できないと示しました。 これは求め方が分からないという意味ではなく、両者を一意に定める手段が存在しないことを証明できるという意味です。 簡単に説明すると、こうです。 線分VP1-VP2の両端を除く任意の点を視心としたとき、対応するSPは視心を通る水平線の垂線とVP1-VP2を直径とする円の交点として得ることができます。 このとき、4点SP,VC,VP1,VP2は数学的な整合性が取れており、画角的に不適切なものになることはあっても、空間の解釈として破綻することはありません。 これは視心を一意に定められないことを意味します。

つまり適当に取った2つの消失点だけでは、数学的に視心を求める方法は絶対に存在しないということです。この場合、視心は描き手が決めるしかありません。 特にこだわりがないのであれば、水平線上かつ画面の中央付近に視心を置くのが無難です。 ただし視心を明確に定めないまま、寸法が既知の何かを画面上に置けば、その瞬間に視心が確定してしまうので、その場合は描き手が視心の位置を勝手に決めることはできません。


[Click] 適当に描いた四角形を正方形とみなせるか?

みなせます。スライドのP13に示す図から予測が可能ですが、対辺が平行でなく、すべての内角が180°未満の四角形であれば、どのような四角形であっても二点透視図の正方形とみなす視点(SP)が存在します。 ある水平線上にVP1,VP2を適当に置き、2点間にDVPをやはり適当に置いたとすると、これに対応する正方形の向きが必ず存在することは、下図から読み取れるかと思います。

対角消失点(DVP)は2消失点間の任意の位置に発生しうることを示す図

さらに二点透視図に限らない一般論として言えば、任意の正方形Aに対して、内角が180°未満で構成される任意の四角形Bを用意したとき、実空間上でAである図形が透視図上でBに見える視点は必ず存在します。 ただしここでいう透視図とはカメラを無限遠まで離した平行投影図も含むものとします。

実際には適正画角というものがありますので、適当に四角形を描いておけばOKとはなりませんが、ある程度見た目で判断して四角形を描き、それを描き手が正方形と主張することは可能です。もちろん制約のない(視心やSPが確定していない)画面での話です。


図形座標系カメラ距離解説
空間上の正方形が透視図上で正方形に見える例正方形1点透視有限または無限空間上での正方形が透視図上でも正方形に見える視点は、1点透視図に限られます。カメラと被写体との距離は有限でも無限でも構いません。
空間上の正方形が透視図上で長方形に見える例長方形2点透視無限正方形が長方形に見える視点は、2点透視図のカメラを無限遠に離した場合に限ります。
空間上の正方形が透視図上で菱形に見える例菱形3点透視無限正方形が菱形に見える視点は、消失点が二等辺三角形(正三角形を含む)を描く3点透視図のカメラを無限遠に離した場合に限ります。
空間上の正方形が透視図上で平行四辺形に見える例平行四辺形3点透視無限正方形が平行四辺形に見える視点は、任意の3点透視図のカメラを無限遠に離した場合に限ります。
空間上の正方形が透視図上で台形に見える例台形1点透視
2点透視
有限正方形が台形に見える視点は、有限距離の1点透視図または2点透視図に限ります。
空間上の正方形が透視図上で普通の四角形に見える例その他2点透視
3点透視
有限正方形が平行対のない四角形に見える視点は、カメラ距離が有限の2点透視図または3点透視図に限ります。

参考文献:射影幾何学入門 ―生物の形態と数学― (丹羽 敏雄著) P54

お詫びと訂正について

2015/3/8にアップした上記コラムの記述内容に誤りがありました。謹んでお詫び申しあげます。

内角が180°を超える四角形 四角形には1つの内角が180°を超えるパターンが存在することを見落としていました。 このパターンにおいては検証が済んでおりませんが、直感的に判断してこれを正方形とみなす視点はないものと思われます。 よって「任意の四角形を正方形とみなす視点が存在する」の記述はおそらく誤りという結論になります。 連鎖的に「任意の四角形Bを任意の四角形Aとみなす視点が存在する」の記述も Aを正方形と置いた時点で成り立たないのであれば、誤りということになります。

任意の四角形A,Bに対して、AをBに変換する射影写像が必ず存在することは上記参考文献に記載されていますが、 透視図法は数学的には配景写像と呼ばれており、この配景写像を複数回繰り返したものを射影写像と呼んでいます。 繰り返し回数は1回でも良いので、配景写像は射影写像の1種であると言えますが、 「1回の配景写像でAをBに変換可能」との記述はどこにもないため、再度検証しなおす必要があることが判明しました。


[Click] 適当に描いた直方体を立方体とみなせるか?

みなせません。地面に正方形(見かけ上は普通の四角形)を描いた瞬間に高さ方向の辺の長さは一意に決まるので、測点法などを使って長さを測る必要があります。



前のページ 次のページ