はじめに

この節では魚眼パースの直接的な作図方法について説明します。 魚眼に限らず、3DCGを利用した作図全般に言えることですが、 3Dソフトを利用した作図は正確無比である反面、 融通が利かず、描き手の思い通りの画面を構築しづらいという欠点があります。 図法による作図は2D平面上に線を直接引くため、描き手の意思を反映させながら、作画を進めることができます。 とはいえ魚眼の作画は茨の道です。 箱1つ描くだけでも相当な苦労が付きまといますので、覚悟して読み進めてください。

関連ページ
画角 - 魚眼レンズ
数学 - 魚眼レンズ

魚眼パースにおけるPPとは

魚眼パースは球面上に投影することを原理としていますが、これを平面画として描き表すには平面への再投影が必要不可欠です。 ここで再投影に使う平面のことを魚眼パースにおけるPP(Picture Plane)と定義することにします。 以降の説明で「PPと平行」等の表現を使うことがありますが、このPPは前述の定義によるものを指します。 また視心はSPを通りPPと直交する直線を指します。

大元の投影に使う球面に関しては的確な用語がありませんが、本サイトでは「球画面」と呼ぶことにします。 planeという単語は「平面」を指すため、球画面に対してPPという表現を使うことはできず、英語で表現するのであれば、picture surfaceとでも呼ぶしかありません。surfaceは平面や曲面の総称である表面を指します。

射影方式による違い

魚眼パースを描く上で射影方式の選択は重要です。見た目の違いもありますが、空間上での直線がどのように変形するかで作図の難易度が変わるからです。 魚眼パースによる曲線には規則性があり、多くは楕円になります。少なくとも正射影と立体射影で楕円になることは確実です。(その理由は数学の章で説明しています)。 等距離射影と等立体角射影に関しては、筆者の研究不足により、図形種別が特定できていませんが、等距離射影は概ね楕円になるようです。 例外として、どの射影方式であっても画面上で視心を通る直線だけは、曲線にならず直線になります。

射影方式直線の形状画角特徴
立体射影楕円360°未満球画面を地球儀に例えると、北極方向を視心とし、南極をSPとする透視投影によって平面に再投影します。空間上での直線は楕円として投影されますが、正射影と異なり楕円の中心は視心と一致しません。視心付近を通る直線ほど径の大きな楕円になります。
等距離射影360°以下
(全方位)
地球儀の緯度線に沿って切れ目を入れ、展開したものに相当します。地図における正距方位図法に相当します。市販されているカメラレンズはほとんどがこの射影方式を採用しているため、カメラのような見た目を目指すのであれば、等距離射影を選択することが無難であると言えます。
等立体角射影360°以下
(全方位)
球画面上での面積とPP上での面積が比例関係になる射影方式です。
正射影楕円180以下球画面上の像を平行投影によって平面に再投影します。中央部が大きく映り、周辺部が極端に歪みます。空間上での直線は視心を中心とする楕円になります。また楕円の長径は180°視円錐の直径と一致します。


[Click] 画角180°超は?

多くの魚眼レンズは180°近辺の画角を持ちますが、魚眼パース(正射影を除く)において180°は上限画角ではありません。 とはいえ画角が180°を超えると歪みが極端に酷くなるため、絵画的な意味での実用度は低いと言えます。 「正距方位」で検索すると世界地図が多数ヒットしますが、円の外周部の地形が強く歪んで分かりにくくなることが確認できます。 (地図としてはそれでも使い道がありますが)

全方位(360°)を描く場合は、等距離射影か等立体角射影のいずれかを選択することなります。 立体射影では無限に大きな画面を必要としますので、全方位は事実上表現できません。 これは透視図において、観測者の前方すべて(画角179.999999……°)を映し出すことができないのと同じ理由です。


魚眼パース(正射影)の描き方

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魚眼パース(正射影)の描き方

[Click] 楕円の軸の求め方について

PPと平行な直線に関しては、空間上での直線の向きと楕円の長軸の向きが一致します。すなわち空間上で平行な2本の直線は長軸を共有する楕円になります。 ただし視心と同一平面にいるときは、例外的に直線になります。

これに対してPPと平行でない直線は、楕円の軸の求め方が複雑です。P22以降に示す手順の作図原理ですが、平行線と放射線の性質を利用しています。 重要なのは投影対象の直線とSP平面(SPを通りPPと平行な平面)との交点です。 例えば、交点がSPから見て斜め30°左下にあれば、楕円の長軸も斜め30°左下を向きます。 リンク先のスライドの最終ページに示すSPと点Fの関係に相当します。

点Fは投影対象の直線を観測者側に延長した際に、SP平面と交差する位置を指しており、透視図上では無限の彼方にしか現れない点ですが、魚眼パース上では180°視円錐の縁に視認可能な点として現れます。 この点をF'とすると、空間上でのSP(観測者の目の位置)から見た点Fの方向と、画面上でのVCから見たF'の方向は一致します。 この性質は射影方式に関係なく成り立ちます。画角が180°を越える場合でも、点F'は常に180°視円錐の縁に発生します。

SP平面を始点とする直線群は、透視図上では平行線となりますが、魚眼パース上では180°視円錐の縁を始点とする曲線群になります。 正射影では、これが180°視円錐に内接する楕円となり、接点は常に長軸の頂点であることから、スライドに示す作図方法が成立する理由になります。


その他の作図法

※この節のコンテンツは準備中です。

2~3点透視相当、足線法以外、その他の射影方式についても説明する予定でいます。


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